二上山の麓を流れる清流竹田川(奈良県香芝市)の変容が始まりでした。2017年夏「ガーネットすくい」(火山である二上山にはガーネットが産出)にきた市民が川底にヘドロがたまっていることを確認。水生生物の姿が消え、翌年には川沿いの田んぼの稲が立ち枯れるという事態になりました。近隣の香芝市民から健康不安の声が上がり、その声は休日なく深夜まで操業している二上山の産廃処理場に向けられました。そうしたなか地元市民有志で「ガーネットの会」を2022年に結成。運動の広がりの中で環境保護活動家や登山者、市会議員も参加し「二上山の自然を愛する会」に発展していきました。
会では「産廃学習会」、「水質検査」、「産廃ピラミッド見学会」を開催して来ました。2025年5月には奈良県に対して①住民の立ち会いの下での水質検査の実施、②二上山の景観の修復、③「再生土」の安全性調査の3点の要望をおこないましたが、残念ながら県は「検査の必要ない」と誠実な対応とはいえませんでした(その後水質検査を実施)。
金剛生駒紀泉国定公園の一部である二上山には、ササユリなど貴重な動植物が生息し、多くのハイカーが訪れる自然豊かな山です。この二上山で大規模な開発がおこなわれています。山が大きく削られ姿が大きくかわり、そこには産業廃棄物中間処理施設とピラミッド状の巨大な「盛土」が奈良県香芝市、葛城市、大阪府太子町にまたがりそびえています。また同一経営者による「果樹園」、「小菊栽培所」の開発も近接した地域で同時に実施され、開発の総面積は70ha以上になります。
疋田建設(疋田砕石)は1980年代から二上山で採石事業をおこなってきましたが、2000年以降、産業廃棄物中間処理業者として産業廃棄物の処理をおこなっています。その規模は奈良県内でも有数で、とくに汚泥等(汚泥、鉱さい、燃え殻、煤じん)に関しては全国から収集。それを積んだトラックが一日中行き交い、年間の産廃処理量は100万トンにものぼっています。
会はこの間、産廃処理場の近辺でのべ20回以上「水質検査」をおこない、その大部分で平常値(通常の河川)を超える値を検出。汚染が明らかになっています。疋田建設の元従業員の内部告発があり、作業中の臭いがひどいこと、健康不安があることなどが証言されました。
市民が「二上山ではなく三上山」と話す「産廃ピラミッド」の正体は汚泥等(産廃)を処理した「再生土」による盛土です。その中には重金属など有害物質が含まれています。それを「造粒固化」という手法で有害物質を閉じ込め「無害化」したとするものが「再生土」です。会はこの「再生土」の安全性に強い疑念をもち、県に対して徹底した検査の実施を求めています。
元従業員は「(汚泥等を)持ち込むばかりでなにも出荷していない」と証言しています。通常、中間処理施設では産廃を脱水や焼却などで減量化し最終処分地に搬入します。ですがこの処理施設では処理したものを留め置き、積み上げています。中間処理施設にもかかわらず100%再資源化をうたい「最終処分地化」しています。その結果、最終処分にかかる費用がいらず大きな利益をあげていると、私たちは推定しています。
2025年5月参議院環境委員会で山下よしき参議院議員(共産党)が「二上山産廃問題」をとりあげ、巨大な盛土により景観、歴史的価値が損なわれ、汚染の恐れなど住民の生活環境に支障が発生している、再生土をカムフラージュにして最終処分場化している疑いがある、と追及しました。また、香芝市議会で青木恒子、中井政友の両市議がとりあげ、市は水質検査を竹田川上流でおこなうことを表明、景観条例の策定に向けて動き始めています。奈良県会でも山村県議が認可・許可をおこなってきた県当局にこの問題で質問しました。
こうした動きと会の運動により、奈良県はかたくなに拒否してきた水質検査を実施(2025年6月20日)しました。