歌集『ふたかみ』より 不羈 山口英雄(香芝市・穴虫)
※二上山シンポジウム(12月7日)「二上山魅力展」のために提供いただきました
ふたかみを 春の彼岸に染むる陽に 弥陀の示現をわれ疑わず
春ひと日 嶽にのぼりてもろ人の 遊びてぞ来し ならはし絶えず
かなしみを 沈めて谷をとざしたる 霞は動かず暮るるふたかみ
ふたかみに しずまりゐます皇子を問ふ子に万葉のうたを説きけり
花を手向け 老女峠を超えゆけり 馬頭観音草に埋もるる
はれやらぬ怨嗟つつみて墳丘の灰色の疎林風は鳴るなり
魂鎮め 大津の皇子のおくつきと かくも静けきふたかみのやま
かしこみて ふたかみやまに 鎮魂(しず)めたる 皇子がいのちを風傷み吹く
しみじみと 寂しき色に染みわたり 夕陽落ちゆく ふたかみの峰
闇をかぎる 空にゆふやけ いつまでも残りてとほく ふたかみ暮るる