二上山シンポジウムの参加者からたくさんの質問が寄せられました。これらの質問にお答えします。
※同内容の質問はまとめて一つにしています。
【質問】国、県、市の許可を得ているか。現場の⼟地は誰から購⼊したか、⼟地の所有者は誰か。企業に産廃による⽔質汚染対策、安全対策を実施させる企業にするためにどうしたらいいか。中間処理施設だが最終処分場に出す気はあるか。中間処理物が最終処分場に運搬されていないのは⽦⽥だけの問題ではなく、産廃排出業者の問題でもあるのではないか。
【回答】
・国、県、市の許可について
株式会社⽦⽥建設(本社・⾹芝市今泉・⽦⽥グループ中核企業)は「産業廃棄物処分業(中間処分のみ)」、「産業廃棄物収集運搬業」、「汚染⼟壌処理業」の許可を奈良県から得ています。また、グループ内の⽦⽥砕⽯は「採⽯業者の登録」及び⼆上⼭での「岩⽯採取計画の認可」を奈良県から得ています。さらにグループに含まれているかは不明ですが産廃処理場に近接する、グループ関係者が経営者である「果樹園」、「⼩菊等栽培所」の開発、造成に関しては奈良県から「林地開発許可」を得ています。 基本的に許可は県の権限になります。
・⼟地取得について
⼆上⼭は「⾦剛⽣駒紀泉国定公園」にあります。国定公園内での⼟地取得⾃体は可能ですが、⾃然公園法による厳しい規制があります。実際に産廃施設等がある⼟地の取得者はグループの経営者・関係者です。また、地⽬も農地や⼭林、雑種地などとなっており、かなり広範囲に取得しているとみられます。(※個⼈情報保護法により登記情報等をこの場で⽰すことは適切でないと考えます。)
・⽔質等環境及び景観対策、企業側に守らせるには
⾏政(主に県、国、市もふくむ)の強⼒な指導が必要です。産業廃棄物の処理やリサイクルの社会的重要性は認めますが、それは「⾃然環境の保全」「住⺠の安全安⼼」が守られることが前提です。営利⽬的である企業にそうしたことを遵守させるのが⾏政の役割であり、その役割を果たすよう市民の声をあつめ働きかけていきます。
・「最終処分場」について
株式会社⽦⽥建設は産業廃棄物中間処理業にもかかわらず⼆上⼭を「最終処分場」化しています。年間 100 万トン以上の産業廃棄物を処理していますが、最終処分場に運搬されたものはありません。私たちはそのほとんどが産廃を処理した⽣成物「再⽣⼟」として、巨⼤な盛⼟状に積み上げられていると考えています。その「再⽣⼟」が安全なのか、廃棄物ではなく「有価物」としての条件を満たしているのか、強い疑念をもっています。
・排出事業者責任について
法令では事業活動から出る産業廃棄物を排出事業者⾃らの責任で適正に処理することが義務づけられています。そのためにマニフェスト(管理伝票)があり、最終処分まで確認することが必要です。⽦⽥建設の場合は中間処理施設ですが、「100%再⽣」のためマニフェストに「最終処分を行った場所」として記載することが可能とされています。その結果、遠くは北関東など広範囲から「産廃」を集め、大きな利益をあげているのが実態です。
【質問】自治体、行政はどんな立場なのか。香芝市、奈良県、行政はどのように回答しているのか。国会での質問の後、「奈良県の行動を注視する」との答弁から県の対応はどうなったか。
【回答】開発の許認可権は奈良県にあります。国会質問を受けて奈良県が6月に行った水質検査(調査場所は鈍鶴峯駐車場付近、西川自動車付近、水門の3ケ所)はおざなりの 検査です。 それも一度きりで今後も続けるかどうかについては 答えていません。
【質問】奈良県は竹田川の水質検査結果問題ないとしているが、竹田川の源泉からすべての地点を調べたか疑問、再度もっと強く要望すべき。再生土の科学的調査必要。
【回答】
・県への要望
2025年5月に奈良県に対し水質検査を要望しましたが、県の水質検査は1回限りの不十分なものです。今後も奈良県に対し水質検査の実施を要望していきます。同時に我々も可能な限り 範囲を広げて 水質チェック や土壌汚染を調べていく予定です。電気伝導度(汚染土、水)の等高線化(※電気伝導度の近い所の線を引くことで汚染の広がりの目安が把握できる)のために 測定点を増やし、大阪側とも 連携しながらやっていきたい。
・再生土の科学的調査
まさにその通りです。48時間ぐらいで 出荷前検査で溶出がないという だけ の検査ではなく長期間の検査を求めていきたいし、そのための傍証となる独自の調査も行っていきたいと考えています。
【質問】ダイアモンドトレイル北口から登山していると登山道の際まで伐採、パワーシャベルで掘削して、山が丸裸。重機の騒音の面からもプッシュできないか。景観条例に違反したてとき、現状回復などどんな行政指導できるのか。景観条例については解決済みという理解でいいか。
【回答】
・騒⾳問題
質問の伐採、騒⾳の件は「⼩菊等栽培所」の造成のためと思われます。この造成工事はダイアモンドトレール北⼝の東南、産廃盛⼟のすぐ近くでおこなわれています。開発は 2025 年から 2029 年 10 ⽉までと⻑期にわたります。その⽬的が本当に⼩菊等栽培所の造成なのかは不明ですが、騒⾳問題については県に公開質問状をだす予定ですので、その場も活⽤して景観問題とあわせて登⼭者からの声として追求していきたいと考えています。
・ 景観条例
奈良県は「景観⾏政団体」として奈良県景観条例を制定するとともに、景観法に基づく奈良県景観計画を策定しています。⾹芝市は独⾃の景観条例策定に向けて動いていますが、制定はこれからです。
「景観条例」に違反したときの⾏政による命令、⾏政指導などの処分、措置についての質問ですが、勧告、変更命令、原状回復命令などの措置ができ、それに従わない場合は懲役(1 年以下)、罰⾦を科すことができます。
しかし、問題はそうした措置をおこなわないケースがほとんどだということです。「景観破壊や景観回復を訴える住⺠」と「開発を許可した⾏政」との対⽴という構図になることの⽅が多いといえます。ですから「景観条例」がある、あるいは制定すれば問題が解決するとはならないと考えます。事実、奈良県は「産廃の巨⼤な盛⼟」の異様な光景に対して、「修景緑化の途中と考える」と是認しています。⼆上⼭の⾃然を愛する会の「国定公園であることを最⼤限尊重した原状回復」とは相容れない⾒解です。景観条例の制定及びその運用に深く市民がかかわり、行政と共同できるような、あるいは行政を監視できるしくみをつくることが重要です。
・香芝市が進めようとしている景観条例について。
奈良県の景観条例は、現在市内では香芝インターチェンジ周辺の景観についての規制しかありません。緩やかな規制で、地域特性に応じた景観づくりには不十分です。特に二上山周辺の景観は、自然環境や歴史的にも価値のあるもので、隣の葛城市では、こうした環境を守るために既に景観条例が制定されています。
香芝市ではこれから審議会等を通じて、どのような地域特性があり、守られればならないかを審議し、条例を実施する団体として奈良県に申請していく流れになると思います。これらを通じて私たちが目指している産業廃棄物中間処理場を規制し正常化する枠組みになるよう、香芝市や奈良県に運動していくことが必要です。
しかしながら、この景観条例ができたとしても「法の不遡及の原則」で、すでにできた疋田による盛り土(産廃ピラミッド)の除去と現状回復はできず、景観対策としては限界があります。産廃対策としては造粒固化による有害物質が含まれる盛土の違法性を明らかにして奈良県に撤去命令を出させることが求められます。
【質問】無許可なのに企業側が許可を得ず事業継続できてしまうことはあり得るか。違法行為だと思われるが、訴訟はしていないのか。産廃問題の解決策はあるか。奈良県に許可を取り消す住民訴訟は可能か。今後問題を解決するためにはどのような工程で取り組んでいくのか。
【回答】 業者は中間処理業者であり、最終処分を行う業者ではありませんが、中間処理後の有害物質を造粒固化して盛り土に混ぜ込んでいます。この盛土について2025年5月22日に二上山の自然を愛する会が奈良県に対して行った要望書の提出(①産廃排出口周辺の水質調査の実施②二上山の景観の修復及び環境保全③「造粒固化」の名目で行われている処理土の安全性の緊急調査の実施)に対し、奈良県の姿勢は、住民より事業者側の意向、許可した奈良県の面子を優先していると感じられるものでした。今後、国定公園であることを最大限尊重した現状回復のために、住民や市民とともに許可等の取り消しの行政処分の申請(行政手続法による処分の求め)や行政訴訟も視野に運動を進めていきます。
【質問】 今回のシンポジウムの案内を香芝市の市会議員や県会議員に出したのか。景観破壊で一番影響を受けるのは大阪の河内地域、大阪側と連携しているか。
【回答】奈良県知事、地元選出の県会議員並びに県会環境委員会の議員、香芝市長 並びに 香芝市会議員全員 に今回のシンポの呼びかけを行いました。当日のシンポジウムには香芝市議4名、県会議員1名 と葛城市議2名の参加を確認しています。
⼤阪側では、⼆上⼭をはさむ太⼦町の⽅々とは情報交換が主ですが連携しています。シンポジウムにも太子町議4名の参加を確認しています。二上山は奈良県と大阪府の、そして市民共通の財産です。今後はこうしたつながりを⽣かして共同のとりくみを広げていきたいと考えています。
数は力です。「二上山の自然を愛する会」への入会を改めて 呼びかけます。
【質問】サヌカイトの成因、何故二上山にしか見られないのか。
【回答】サヌカイトは二上山以外でも産出します。有名なのは香川県の五色台・屋島周辺、そしてこの二上山周辺です。広島、九州にも産出地はあります。そもそも名前の由来は讃岐(さぬき)岩からサヌカイトと、明治のドイツ人地質学者ナウマンが讃岐で発見し(ナウマン象のナウマンです)ワインシェンクという同じドイツ人学者が調査し命名しました。
成因ですが、サヌカイトは安山岩の一種でマグネシウムを多く含むそうです。香川の産地も二上山も同じころ(1500~1400 万年前)の瀬戸内火山帯に属し、その安山岩マグマがゆっくり固まると通常の各鉱物の結晶が析出した安山岩になりますが、急冷されると結晶化せずガラス化(非結晶質)し、あのような黒いガラス質のサヌカイトとなります。ですから二上山には通常の安山岩も沢山あります。(ちなみに私たちの周りのガラス品も、ケイ素分を急冷し非晶質のまま固化して透明なガラスとし作ります。)
サヌカイトは黒く均質で固いので、叩くとカンカン(キンキン)と硬質のいい音がし、「カンカン石」とも言われています。 この特性を生かして旧石器時代より石器として使われました。どんづる峯~穴虫~関屋方面に石器としてのサヌカイト工房遺跡群があります( 二上山北麓遺跡群)。ここで作られたサヌカイト石器は広く近畿一円に流通しました。その工房群遺跡地帯では今でもサヌカイトの石器製造のカケラのようなモノが結構見られます。これらのことは二上博物館でご覧ください。
【質問】 古代の太陽信仰による二上山信仰が浄土信仰による「西方極楽」への信仰へと大転換したことによって二上山の人々の精神に占める意味にどのような変化があったと考えられるか。
【回答】民衆による浄土信仰は、室町期に主に浄土真宗(一向宗)中興の祖と呼ばれる蓮如によって近畿から北陸、東海、中国地方へと広がっていきます。その中で八尾市久宝寺や富田林、橿原市今井町などで一向門徒による寺内町が形成されます。
室町期には、信者が当時の権力から信仰を守るために、加賀や三河、伊勢長島などで一向一揆が各地で行われます。のちには信長による1570年からの石山本願寺攻略(石山戦争)がよく知られています。この戦争では石山本願寺を物質支援する毛利軍の中の安芸門徒が「生きるは地獄、死ぬは極楽浄土」のムシロ旗を掲げました。信仰心の篤い信者は死をも恐れない、自分は死んで極楽浄土に行くという強い信念を持って戦争に参加したと考えられます。
二上山の麓には当麻寺があります。この当麻寺では毎年4月14日に練供養という仏教行事が行われます。この行事は西方浄土から観音、勢至以下25菩薩が来迎して衆生を浄土に導くという浄土思想や弥陀、聖衆近接の信仰に根ざしたもので、11世紀以降盛んに催されたとされています。また当麻寺には中将姫の伝承があります。これによると、西暦763年に藤原豊成の娘中将姫が入寺、当麻曼荼羅を織ったとされています。練供養はこの中将姫の浄土往生になぞらえて行うものとされています。
二上山を眺めるところに住む人々にとって死ねば二上山の向こうの極楽浄土に行ける、と信じてひたすら南無阿弥陀仏を唱える日々を送ったことと思われます。